最低賃金が上がるとき、人を雇っている側が9月中にやること
最低賃金が上がるとき、時給で払っている人だけの話だと思われがちですが、そうではありません。
月給で払っている人も対象です。月給を時間あたりに換算して、最低賃金額と比べます。
しかもこの計算には、入れてよい手当と入れてはいけない手当があります。ここを間違えると、払っているつもりで下回ってしまいます。
全国一斉ではありません
まず前提として、最低賃金の発効日は都道府県ごとに違います。
地域別最低賃金は、各都道府県労働局長が決定します。「10月1日から」と決まっているわけではありません。
昨年度は、10月1日から翌年3月31日まで幅がありました。自分の都道府県の発効日を確認してください。
発効日が給与の締めの途中に来るとき
ここがいちばん間違えやすいところです。
たとえば毎月15日締めの会社で、自分の都道府県の発効日が10月1日だとします。このとき、9月16日から10月15日までの給与は、その途中で単価が変わります。
厚生労働省は、この点をはっきり書いています。
賃金算定期間の途中に発効日がある場合であっても、発効日以降は改定後の最低賃金額以上の賃金を支払う必要があります
つまり、ひとつの給与の中で単価が2つになります。
| 期間 | 適用する単価 |
|---|---|
| 9月16日〜9月30日 | 改定前の単価 |
| 10月1日〜10月15日 | 改定後の単価 |
「次の給与から上げればいい」は通りません。発効日から締め日までの分が不足し、差額の支払い義務が生じます。
厚生労働省は同じページで、支払わなかった場合についてこう書いています。
支払わない場合は最低賃金法違反として罰則(50万円以下の罰金)が定められています。
今年(令和8年度)の発効日
令和8年度の改定額は、令和8年10月1日から12月2日までの間に、順次発効される予定です(令和8年9月3日発表)。全国加重平均は1,177円で、昨年度の1,121円から56円の引上げです。
出典:厚生労働省 全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました
自分の都道府県の発効日を、先に確認してください。発効日が決まらないと、どの日から単価を切り替えるかが決まりません。
月給の人をどう判定するか
計算式はこうです。
月給 ÷ 1箇月平均所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)
厚生労働省が示している計算例では、次のようになっています。
```
(180,000円 × 12か月) ÷ (250日 × 8時間) = 1,080円
```
月給18万円、年間所定労働日数250日、1日8時間の場合、時間あたり1,080円という計算です。この数字が、自分の都道府県の最低賃金額を下回っていないかを見ます。
計算に入れない手当があります
ここが間違えやすいところです。次の手当は、最低賃金と比べる賃金には含めません。
- 通勤手当
- 時間外割増賃金(残業代)
- 深夜割増賃金
- 休日割増賃金
- 精皆勤手当
- 家族手当
- 賞与など、臨時に支払われる賃金
含めるのは、基本給と職務手当などです。
つまり「通勤手当込みなら足りている」は通りません。通勤手当を除いた金額で判定します。
残業代を含めて計算してしまうと、実態より高く見えてしまうので注意してください。
下回っていた場合
最低賃金額より低い賃金は、労働者と使用者の合意があっても無効です。最低賃金額と同額の定めをしたものとみなされます。
そのうえで、次の責任が生じます。
- 差額の支払い義務
- 50万円以下の罰金(最低賃金法第40条)
「本人が納得している」「そういう契約だった」は理由になりません。
出典:e-Gov 最低賃金法
やることは3つ
① 自分の都道府県の発効日を調べる
厚生労働省のサイトか、都道府県労働局のページで確認できます。全国一斉ではないので、自分の事業所がある都道府県を見てください。
複数の都道府県に事業所がある場合は、それぞれの発効日を確認する必要があります。
② 月給を時給に換算する
月給 ÷ 1箇月平均所定労働時間で計算します。
1箇月平均所定労働時間は、年間所定労働日数 × 1日の所定労働時間 ÷ 12 で求めます。
このとき、通勤手当・残業代・家族手当・精皆勤手当は月給から除いて計算してください。
③ 足りなければ引き上げる
発効日までに引き上げます。発効日を1日でも過ぎて下回っていれば、その日から違反です。
引き上げが難しい場合は、業務改善助成金など、賃上げを支援する制度があります。要件があるので、厚生労働省のページで確認してください。
まとめ
- 最低賃金の発効日は都道府県ごとに違う。全国一斉ではない(令和8年度は10月1日〜12月2日)
- 締めの途中に発効日が来ると、ひとつの給与の中で単価が2つになる。「次の給与から」では足りない
- 月給の人も対象。月給 ÷ 1箇月平均所定労働時間で比べる
- 通勤手当・残業代・家族手当・精皆勤手当は計算に入れない
- 下回れば差額の支払い+50万円以下の罰金。合意があっても無効