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インターンを1人受け入れるだけで対象。10月1日から求職者へのセクハラ防止措置が義務になります

2026-09-05
セクハラ男女雇用機会均等法採用経営者

求人を出した。就職説明会に出た。学生を1人だけインターンで受け入れた。

このどれか一つでも当てはまるなら、2026年10月1日から11項目の義務を負います。

厚生労働省の施行通達ははっきり書いています。「企業の規模や職場の状況の如何を問わず必ず講じなければならない」。従業員が3人でも300人でも、義務の中身は同じです。

何が新しくできたのか

項目内容
施行日2026年10月1日
根拠条文男女雇用機会均等法 第13条(新設)
改正法令和7年法律第63号(2025年6月11日公布)
指針令和8年厚生労働省告示第52号
義務の項目数11項目(規模による免除なし)

条文はこうです。

事業主は、求職者その他これに類する者(中略)によるその求職活動(中略)において行われる当該事業主が雇用する労働者による性的な言動により当該求職者等の求職活動等が阻害されることのないよう(中略)雇用管理上必要な措置を講じなければならない

守る対象が「自社の労働者」ではなく「まだ自社の人間ではない求職者」である点が、従来のセクハラ措置義務(第11条)と違うところです。

条番号が大きくずれています

この改正で均等法の条番号が動きました。古い解説記事を読むときは注意してください。

内容改正前改正後
職場のセクハラ措置義務第11条第11条(変わらず)
求職者等セクハラ措置義務第13条(新設)
妊娠・出産等ハラスメント第11条の3第15条
報告徴収・助言指導勧告第29条第35条
公表第30条第36条
過料第33条第39条

「求職者等」に誰が入るか

範囲は条文本体ではなく、施行規則第2条の3で決まっています。

対象になる対象にならない
応募・選考求人に応募した人、採用面接を受ける人
説明・訪問就職説明会の参加者、OB・OG訪問で自社の従業員を訪ねてくる人授業の一環としての社会科見学、企業を招いた講演会など、専ら教育を目的とするもの
実習インターンシップ参加者、教育実習・看護実習その他の実習を受ける人

内定者は場合によって分かれます。採用内定により労働契約が成立したと認められる場合、その人は第13条ではなく第11条(職場のセクハラ)の対象になります。成立したと認められない場合は「求職者等」に当たります。

加害者側の「労働者」には、正社員だけでなくパート・契約社員も全て含まれます。派遣スタッフについては、労働者派遣法第47条の2により派遣先も雇用主とみなされます。

「どこで」の範囲が広い

自社のオフィスで起きたことだけ、と考えると読み違えます。指針はこう書いています。

なお、SNS等のオンラインを介したものやオンライン上で行われるものも含まれる。また、事業主が雇用する労働者が通常就業している場所で行われるものに限らない。

通達はさらに、OB・OG訪問を行うための飲食店、就職説明会の貸し会議室や学校のキャンパスも含まれると例示しています。

懇親会も、線引き次第で入ります。

なお、求職活動等の活動時間外の「懇親の場」等であっても、実質上事業主の採用に資する活動や(中略)実習の延長と考えられる場面で行われるものも求職活動等に該当する。

判断は、①労働者の職務との関連性、②求職活動等との関連性、③労働者と求職者等との関係性、④参加者、⑤参加や対応が強制的か任意か、を考慮して個別に行うとされています。

義務は11項目

#措置の内容誰に周知するか
求職者等セクハラの内容と、行ってはならない旨の方針を明確化する労働者
行為者を厳正に対処する旨の方針と対処の内容を、就業規則その他の文書に規定する労働者
求職活動等に関するルールをあらかじめ明確化する労働者と求職者等の両方
相談窓口をあらかじめ定める求職者等
窓口担当者が適切に対応できるようにする
事実関係を迅速かつ正確に確認する
被害者への配慮の措置を適正に行う
行為者に対する措置を適正に行う
再発防止に向けた措置を講ずる
相談者・行為者等のプライバシーを保護する労働者と求職者等の両方
協力等を理由とする不利益取扱いをされない旨を定める労働者

③の「求職活動等に関するルール」が新しい発想です

指針は例として、面談の時間および場所の指定、実施体制、やり取りに用いるSNSの種類の指定を挙げています。通達は理由をこう説明しています。

一般に、個別に求職者等と労働者が連絡を取り、求職者等と労働者が1対1で面会する場面においては、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントが発生しやすいものと考えられるため

「実施体制」の例として、通達は「面談を行う際に労働者が複数人で対応すること」を挙げています。

なお指針は、措置の方法については「限定列挙ではない」としています。やるかどうかは選べませんが、やり方は選べます。

罰金はありません。効くのは公表です

何が起きたときどうなるか根拠
11項目の措置を講じていないそれ自体への罰金・過料の定めはない
行政が必要と認めたとき報告を求め、または助言・指導・勧告ができる第35条第1項
勧告に従わなかったその旨を公表することができる第36条(第13条が明記されている)
報告をしない・虚偽の報告をした20万円以下の過料第39条

採用活動をする会社にとって、社名公表は採用そのものに跳ね返ります。そちらが実質的な制裁だと考えて動くのが実際的です。

なお、措置にいくらかかるかを示した公的な金額は、確認した一次資料の中に見当たりませんでした。

間違えやすいところ

「就業規則がないから無理」

指針は「就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書」と書いています。通達はその例として「従業員心得や必携、行動マニュアル等」を挙げています。就業規則の作成義務がない規模でも、義務が免除されるわけではありません。

相談窓口を形式的に置くだけ

通達が明確に否定しています。

窓口を形式的に設けるだけでは足らず、実質的な対応が可能な窓口が設けられていることをいう

社内にだけ周知して、求職者に伝えない

11項目のうち③④⑩は求職者等への周知が要素です。社内規程を整えただけでは満たしません。ホームページ、パンフレット、SNS、就職説明会での案内など、届く形にする必要があります。

相談窓口を人事担当者だけにする

義務違反ではありませんが、指針はわざわざこう書いています。

求職者等は人事担当者への相談をためらうことも想定されることから、相談窓口の担当者として人事担当者以外の者を指定することも考えられる

採否を決める人が相談窓口だと、機能しない可能性があります。

事実が確認できなかったから何もしない

指針は再発防止について「生じた事実が確認できなかった場合においても、同様の措置を講ずること」としています。

「本人が笑って応じていた」を否定材料にする

通達が釘を刺しています。

相談者が行為者に対して迎合的な言動を行っていたとしても、その事実が必ずしもセクシュアルハラスメントを受けたことを単純に否定する理由にはならない

やること

① 採用に関わる場面を書き出す

求人、面接、説明会、OB・OG訪問、インターン。1つでもあれば対象です。

② 1対1になる場面があるか見る

③のルールはここが起点です。面談の時間・場所・使うSNS・複数人での対応。この4つを決めるだけでも形になります。

③ 求職者から見える場所に窓口があるか確かめる

社内向けだけになっていないか。ここが③④⑩の分かれ目です。

④ 原文を確認する

まとめ

この記事は制度の一般的な説明です。個別の判断については税理士・社会保険労務士など有資格の専門家にご相談ください。